アーチファクトとは・・・?わからない人ココにおいで!
診療放射線技師をやっていれば誰もが悩まされるアーチファクト。
逆に放射線科の出来事に関わらなければ、まず知ることも耳にすることもないものです。
実際にどんなものなのか、現場ではどうしているのか紹介します!
あーち・・・ふぁ・・ふぁくと?
改めてアーチファクトとは何かを辞書で調べた。
- 人工物、工芸品、人工遺物
- ファンタジー作品では古代文明のほうが現在よりも優れている設定ということで高度な技術で作られた道具
- 自然科学で意図せずに人工のものが現れること
- 生物体の死や固定処理などの際の不適切な操作のために2次的に生じた物質や構造
なるほど!わからん!
でしょうね!
見たほうが早いので、今回は画像多めです。
診療放射線技師が裏で苦労して編み出したテクニックをご覧あれ。
実際のCTとMRIの画像を載せていきます。
通信がしんどかったらごめんなさい。
いってみよ〜
アーチファクトとは何か。現役の診療放射線技師が実際の画像を使って解説します。
なぜ息を止めるの?
「縁の下の力持ち!?診療放射線技師が病院内の職人と言える理由」の記事でも書きましたが、あなたにも診療放射線技師が「息を吸って止めてください。楽にしてください。」
と言ってるイメージがありませんか?
じゃあ、なぜ息を止めなければいけないのか。
動いたらボケるから〜
そうです。
普通のカメラだって動いているものを取ればボケます。
放射線科の検査も同じです。動いてればボケます。
最近のデジカメはシャッタースピードが速く高性能なので動いているものを撮ってもボケなくなってきたかもしれません。
でも放射線科の機器は中々そういうわけにはいきません。
一般撮影
2枚の写真をよーく見比べてください。
片方はボケて見づらいね?
片方は細かい気管支が追えるのに対して、もう一方は撮影の際に呼吸をしてしまいボケてしまっています。
ちなみに胸部の写真では息止めは長くても0.02秒程度ですが。
CT
コチラはどうでしょうか?
横隔膜がお皿を積み重ねたようになっています。
これはCTが動きながら撮影するため、呼吸のタイミングによって横隔膜の位置がズレてしまったせいなんです。
行きどめの時間は10秒弱といったところです。
なかなかお年寄りには辛くなってきます・・・。
そもそも息止めの合図が聞こえなかった、なんてことも。
「はい。終わりますね〜。」
「なんか言っとったけど、何言っとるかサッパリわからんかったわ〜。」
「マジカヨ。」
MRI
MRIだとこんな感じです。
波を打つように線が入っています。
この線のせいで見づらくなってしまいました。
MRIは撮影に時間がかかります。
1回の検査で15分〜25分はかかってしまうんです。
そんなに息止められないよ?
さすがにそんなに長いあいだ息を止めていたら検査が終わる前にまずいことになります。
そのため、20秒以下くらいの息止めを何度も行ったり、体に呼吸の動きを見るバンドを取り付けて自動的に撮影する方法もあります。
他にはどんなアーチファクトがあるか
思いつく限りあげると
- モーションアーチファクト
- 放射状アーチファクト
- ダークバンド
- メタルアーチファクト
- リングアーチファクト
- ビームハードニング効果によるアーチファクト
- パーシャルボリューム効果によるアーチファクト
- 折り返しアーアーチファクト
- 磁性体アーチファクト
- トラケーションアーチファクト
- ケミカルシフトアーチファクト
- ジッパーアーチファクト
多すぎ・・・。
思い出せていないものがまだまだあります。
アーチファクトは診断の妨げになることが多いので、なるべく必要のないものは排除しなければいけません。
体内金属によるアーチファクト
CTもMRIも体内金属によるアーチファクトは見た目が派手なんです。
この画像はMRIで撮った画像です。
脳が溶けてる!?
上のほうが欠損していますが、脳が溶けてるわけではありません。
原因は歯の矯正器具やインプラントによってMRIの磁場が乱れることによって発生します。
CTではこんな感じです。
これは歯からではなく脳動脈瘤や、動脈瘤によって引き起こされたクモ膜下出血の治療に使われたクリップによるものです。
CTとMRIの違いについて説明したときに原理に少し触れました。
CTは通り抜けたX線の量を計算しています。
ではX線が通り抜けることができないほど硬いものがあったら?
本来X線をキャッチするはずの検出器に届かないため、機械はどこでX線が阻害されたのかが分からなくなります。
そのため金属部分を中心に光ったような画像になります。
体の中に手術で金属を入れている人は意外と多い。
骨折での手術なども代表的な体内金属です。
写真の患者さんはお腹のCT検査をしましたが・・・ご覧の通りです。
そこで撮影条件や画像処理によって出来る限りアーチファクトを取り除きます。
ここまで取り除けば骨盤の中が見やすくなったのがわかったいただけますか?
骨折などで使った体内金属はMRIに影響を及ぼさない素材でできているため、他の部位であれば検査することは可能です。
しかし、磁場が乱れるため障害陰影となることが多いんです。
診療放射線技師とアーチファクトとの戦いは毎日熾烈なんです。
患者さんのためにアーチファクトに勝ってね。
日々、どうすればアーチファクトに影響されず 邪魔されず適切な画像を提供できるか。
勉強しかないですね。